俺は、お前がいいんだよ。

「どうしても、ダメか?」


「えっ…」


「お礼されるの、そんなに嫌?」


真っ直ぐ見つめてくる瀬ノ内君から、逃げるように視線を逸らす。


「嫌っていうか、お礼に割く時間だって勿体ないと思います…。瀬ノ内君にも都合があるはずですし、そもそも…よく知らない相手にお礼だなんて、神経…使うんじゃないですか?」


何言ってんだ、私。


もっと、他に言い方あるでしょうが…。


自分自身に呆れていると、瀬ノ内君のフッと笑う声が聞こえた。


「要は、俺を気遣ってくれてるってことか…。」


「きっ、気遣ってるわけじゃないです。」


「でも、俺には…そう聞こえた。なんかさ、伊織の言葉の奥に優しさが見えた。」


「…………。」


そんなこと言われたの初めて…。


ビックリして固まっていると、教室からバッグを肩に掛けた柏木君が出てきた。


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