俺は、お前がいいんだよ。
「と、とにかく…帰りたいので手を離して下さい…。」
「だけど……」
意外と頑固だな。
お礼しなくていいって言ってるんだから、しなければいいじゃん。
眉をしかめると、柏木君が可笑しそうに笑った。
「せっかく陽希が奢るって言ってるんだし、ここは甘えたら?俺が言うのもアレだけど、フレンチトーストは兄貴のカフェのイチオシだよ。」
「えっ……」
そ、そうなんだ…。
フレンチトースト好きとしては、そこまで言われたら…ぜひ食べてみたい…。
お腹も空いてることだし…。
チラシのフレンチトーストの写真を見ながら、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「……そっ、そこまで言うなら、気乗りはしませんが行きます…。」
ポツリと小さな声で呟く。
完全に、フレンチトーストの誘惑に負けた瞬間だった。