俺は、お前がいいんだよ。
「了解。バッグ取ってくるから、ちょっと待ってて。」
瀬ノ内君の表情が一気に晴れやかなものへと変わる。
私の腕を掴んでいた手を離すと自分の席へ。
机の上のスクールバッグを肩に掛け、再びこちらに戻ってくると、今度は私の手を握った。
「じゃあ、行くか!」
廊下を足早に歩いていく瀬ノ内君。
女の子たちの冷たい視線が容赦なく私に浴びせられる。
アンタは何様なのよ…なんて声が聞こえてきそうな感じだ。
「ちょっと、瀬ノ内君。」
「ん?」
「手、握る必要ないですよね…?」
「握っちゃいけないルールは無いだろ?」
「えっ……」
そんな切り返しをされるとは思ってなかった私は、キョトンとしてしまった。
確かに、ルールは存在しないけど、どう考えても握らなくていいでしょ。
この人の思考、よく分からない…。