俺は、お前がいいんだよ。
甘いお礼と頼みごと
高校を出た私たち、夕日が照らす道を歩いて駅前へ。
メインストリートから外れた少し細い道。
その通り沿いに構える、柏木君のお兄さんが経営するカフェへと辿り着いた。
「並んでるな。」
「そうですね…。」
カフェの入り口から外へと伸びる列。
十数人ほどが並んでいる状態だ。
「…あの、お店に入るのに時間が掛かりそうですし、やめませんか…?」
私は美味しいもののためなら並ぶのは苦じゃないけど、瀬ノ内君は…きっと違うだろう。
我慢してまで並んで貰うのは気が引ける。
フレンチトーストは、また後日…恵理子と一緒に食べに来ればいいもんね…。
ほぼ帰る気になっていた私だけど、瀬ノ内君は私の手を引いて列の最後尾へと並んでしまった。
「えっ、帰らないんですか…?」
「せっかくここまで来たのに、帰るわけねぇだろ。伊織にフレンチトースト、奢るんだから。」
そこまで、お礼にこだわらなくてもいいのに。
素っ気なく心の中で呟いていると、瀬ノ内君が何か思い出したような表情を浮かべた。