俺は、お前がいいんだよ。
「俺、アンタらと相席なんかしねぇから。つーかさ、馴れ馴れしく話し掛けんの止めてくれる?そういうの、マジで腹立たしいんだけど。」
「えっ…」
女の人たちと共に、私も驚きの声を零す。
不機嫌そうに眉をしかめる瀬ノ内君に、パチパチと瞬きを繰り返した。
聞き間違い…じゃないよね。
今、瀬ノ内君…怒ってた。
「ご、ごめんなさい…。」
女の人たちは罰が悪そうに私たちに背を向ける。
瀬ノ内君は、そんな女の人たちを見ながら小さく溜め息をついた。
「……ったく…」
呟く声は、とても低い。
ダルそうにクシャクシャと頭を掻く瀬ノ内君に、私は驚くばかりだ。
こんな瀬ノ内君、初めて見た。
でも、恵理子が“瀬ノ内君は近寄りがたいクールなオーラ醸し出してる”って言ってたし、これが本来の姿なのかも。
ジーッと見ていると、私の視線に気付いたのか、瀬ノ内君は気まずそうに笑った。