俺は、お前がいいんだよ。
あぁ…失敗。
声が小さくなっちゃった。
もっと声のボリューム上げないと、ただの独り言だよ…。
早速…後悔をする私だけど、瀬ノ内君は優しく笑った。
「伊織が笑顔を見せてくれて良かった。本当は、これぐらいじゃ、お礼が足りねぇぐらいなんだけどさ。」
「そんなことないよ。十分過ぎるぐらいだった。」
「そっか。」
「……………。」
会話が途切れて、お互い沈黙してしまう。
特に話すことも無いから気まずい。
お礼もしてもらったことだし、もう帰ろう…。
「そ、それじゃあ…私はこれで。」
ペコリとお辞儀をして、そそくさと帰ろうとした時…。
「俺、家まで送るよ。」
突然の瀬ノ内君からの申し出。
まさか、そんなことを言われると思ってなかっただけに、一瞬…目を見開いた私だけど、すぐに首を横に振った。
「そこまでしてもらわなくても大丈夫。私、電車通だし。」
「伊織、電車通なんだ。俺も同じ。」
う、うそ…一緒!?
徒歩で通える範囲に住んでるのかと勝手に思ってた。