俺は、お前がいいんだよ。
「わ、わざわざ拾ってもらわなくても大丈夫です。私が、何とかしますから。」
止めに入ったものの、時…既に遅し。
ゆっくりと自動販売機の隙間から手を出した男の子。
大きな拳を私に向けてパッと広げると、そこには…落とした500円玉がのっていた。
「ほら、とれた。」
も、もう…!?
私より腕が長いから、アッサリと奥まで届いちゃうのか…。
「早く受け取れよ。」
「あ…」
男の子に促され、素早く500円玉を受け取った。
「良かったな、無事に拾えて。」
少し笑みを浮かべる男の子から、私は慌てて視線を逸らす。
数歩、後退りをして男の子から離れた。
「私一人でも大丈夫だったのに、勝手に助けるなんて、人が良すぎるんじゃないですか…?」
「えっ…」
「それじゃあ、失礼します。」
男の子にクルリと背を向けた私は、全速力でその場を離れて、昇降口へ。
校舎を出て、しばらく走ったところで足を止めた。