俺は、お前がいいんだよ。
「駅、どこ?」
「あの、本当に大丈夫だから…。っていうか、私…お母さんに頼まれてる用事もあるから、それを済ませて帰るので…。」
我ながら、即座に適当な理由を作れたと思う。
嘘つくのは悪いけど、わざわざ家まで送ってもらうのは気が引けるもんね…。
「それなら仕方ねぇか。」
「うん。」
そうでしょ、仕方ないでしょ?
諦めてくれて良かった…と胸を撫で下ろしていると、瀬ノ内君が口を開いた。
「あのさ、話は変わるけど…伊織は兄弟とかいんの?」
「へ…?」
本当にガラリと話を変えてきたな。
瀬ノ内君が何を考えてるのか分からなくて、拍子抜けしてしまった。
「い、いないよ…。一人っ子だけど、それが何か?」
「あ、いや…。俺は7才の妹がいるんだ。」
「そう、なんだ…。」
私からすれば、どうでもいい情報なんですけど…。
「それでさ、伊織に頼みがあるんだ。5月5日に妹が誕生日を迎えるんだけど、プレゼント選びの買い物、付き合ってくれねぇか?」
「…………は、はいっ!?」
その大声は、街中に響き渡った。