俺は、お前がいいんだよ。
「こっちこっち!」
茶髪の髪に整った目鼻だち。
誰かと思えば、爽やかな笑顔を浮かべた柏木君だった。
「伊織ちゃん、電車通だったのか…。蒼井坂駅の辺に住んでるんだね。」
「あの、柏木君も電車通?」
「うん。俺も陽希も月沢駅から乗ってきてるんだ。」
「…そうなんだ。」
瀬ノ内君たちは月沢駅から通ってるのか。
ということは、高校の最寄り駅の桜瀬駅までは…だいたい40分ぐらい。
通学時間、私の2倍掛かってるんだ…。
「俺、今日はうっかり寝坊してさ。ギリギリでこの電車に乗れたんだ。」
「私も、柏木君と同じ理由…。すごく焦った…。」
「…だよね。俺もマジで焦ってさ、駅まで全速力で走った。」
私と一緒だ…。
苦笑すると、柏木君は少し不思議そうに首を傾げた。
「ん…?そう言えば、伊織ちゃんに自己紹介とかしたっけ?」
「いえ…。でも、友達の女の子から名前を聞いてたので。」
「ああ、なるほどね。」
柏木君は納得した表情を浮かべた。