俺は、お前がいいんだよ。

「瀬ノ内君が話し掛けてくる理由は、中2の時に私が傘を貸したからなの。それで、お礼にフレンチトーストを奢ってくれたんだ…。プレゼント選びは、たまたま…妹さんの誕生日が近いのを思い出して、なんとなく…私にプレゼント選びを頼んだんだと思う。」


「ふーん…。」


「だから、恋とか…そういうのじゃないよ。憶測で言うのは良くないと思う。」


キッパリと告げた私に、不敵な笑みを零す柏木君。


「伊織ちゃん、もしや…恋愛は鈍い系?」


「違う。鈍いとかじゃなくて、一切興味が無いだけ。」


反論すると、柏木君はハハハッと軽快に笑った。


「本当に面白いね、伊織ちゃんは。」


「は…?」


「俺が思うに、お礼のことも誕生日プレゼントのことも、陽希なりに考えたキッカケ作りじゃないかな。繋がってたいんだよ、伊織ちゃんと。」


「わ、私と…?」


「うん。つまり、アイツにとって伊織ちゃんは…それだけの大切な存在ってこと。」


「………。」


あまりにも有り得ない次元の話に、固まってしまった私。


桜瀬駅に着くまで、それは続いた。


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