俺は、お前がいいんだよ。
「伊織ちゃん、大丈夫?さっき、途中から別世界にトリップしてたみたいだけど…」
電車を降り、高校へと続く小さな川沿いの道を足早に歩く。
なぜか、私の隣を並んで歩く柏木君に、少し冷ややかな視線を向けた。
「それは、柏木君が変なこと言うからでしょ?」
「あれ?俺、そんなこと言った?」
「とぼけないでよ…。瀬ノ内君にとって私は大切な存在だとか言ってたじゃない。あれ、絶対に無いよ。」
「なんで…?」
不思議そうな表情で私の顔を見る柏木君からフイッと目を逸らした。
「……私、最悪な性格してるから。」
「えっ…」
「男の子に嫌われることはあっても、好かれることは…まずないよ。」
ずっと、そうだったし。
今だって、気軽に声を掛けてきてくれた柏木君に対して、素っ気ない言葉を突き刺してる。
なんで、こんな可愛げないことしか言えないんだろう…。
同じことの繰り返しに、嫌気がさす。
溜め息を零した時、柏木君の手が私の頭にポンとのせられた。