俺は、お前がいいんだよ。

足取り重く辿り着いた高校。


1年生の教室前の廊下。


5組の教室のところで柏木君は足を止めた。


「じゃ、またね…伊織ちゃん。」


「う、うん…。」


手を振る柏木君に会釈をして、自分のクラスへ急ごうとした時、5組の教室から瀬ノ内君が出て来た。


「伊織…おはよ。」


「お、おはよう…。」


「今、伊織の姿が見えたからさ。昨日の件、日にちを決めたんだけど……」


途中で言葉を止めた瀬ノ内君。


視線が、私の少し横に向けられていた。


「誠…。お前、なんで伊織と一緒に登校してきてんだよ。」


「蒼井坂駅で、たまたま同じ車両に乗ってきたんだ。伊織ちゃん、電車通なんだな。」


「ああ。電車通だっていうのは、昨日…俺も聞いた。」


ん…?


瀬ノ内君、声が凄く低い…。


それに、ピリピリした表情してるような気が…。


なぜ…?


今日は、あまり機嫌がよろしくない日ってことだろうか…。



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