俺は、お前がいいんだよ。
「陽希、そんな顔すんなよ。お前の怒りを買うようなことは何もしてねぇから。」
瀬ノ内君の肩をポンポンと軽く叩いた柏木君は、教室の中へと入っていってしまった。
「………。」
その様子を冷ややかに見ている瀬ノ内君。
やはり不機嫌なようだ。
私も教室に行こうかな…。
少しずつ後退りしていると、それに気付いた瀬ノ内君は私の腕を掴んだ。
「伊織、さっきの話の続きなんだけど…」
「あ、うん…。」
柏木君と話してた時とは違って、声のトーンは通常どおりだ。
でも、表情は…少し硬い。
「5月4日でいい?」
「うん、大丈夫。」
「それじゃあ、4日の13時頃に蒼井坂駅の構内で待ち合わせってことで、よろしくな。」
「分かった…。」
ほんの少しだけ笑みを浮かべた瀬ノ内君。
掴んでいた私の腕をスルリと離して、素っ気なく教室へと戻ってしまった。