俺は、お前がいいんだよ。
なんなの、今のぎこちなさが漂う態度は…。
不思議に思っていると、柏木君が教室の入り口から、ひょっこりと顔を覗かせた。
「ほら、電車の中で俺が言ったことは憶測じゃなくて紛れもない事実でしょ?」
「えっ…?」
「陽希の態度を見れば一目瞭然じゃん。まさか、あんなに…あからさまに態度に出るとは思ってなかったから俺も驚いたけど。」
「あ、あの…よく意味が…」
「あ、もうチャイム鳴る…!またね、伊織ちゃん!」
「ちょ、ちょっと…!!」
呼び止めようとしたけれど、柏木君は直ぐに自分の席へと戻ってしまった。
私に分かるように話をしてよ…。
瀬ノ内君の態度のどこに、紛れもない事実が隠されてたっていうの…?
単に、今日は少し機嫌が悪かった…とかじゃなくて?
な、謎だ…。
間もなくして鳴り響いた、朝のホームルーム開始を告げるチャイム。
私はモヤモヤした気持ちのまま、1組の教室へと急いだ。