俺は、お前がいいんだよ。
「だったら、最初から言わないでよね…!」
「それは無理だな。思ったこと、そのまま伝えたかったから。」
もう、なんなのよ…。
こんなたくさん人がいるところで取り乱したりして、恥ずかしい…。
カアッと頬が熱くなるのを感じていると、瀬ノ内君は何の躊躇いもなく私の手を握った。
「んじゃ、行くか。」
「えっ、ちょっと待ってよ。この手は何!?」
「人が多いから、はぐれないように。」
「失礼ね!私、迷子になんかならないわよ…!」
「まあ、いいじゃん。細かいこと気にすんなよ。」
こ、細かいこと…!?
いやいや、私にとっては重要なことなんだから、サラリと流さないでもらいたいんですけど。
周りを気にせず、堂々と手を引いて歩き出す瀬ノ内君に、心の中で不満を零した。