俺は、お前がいいんだよ。
「俺からすれば、ウザイし…迷惑だけどな。」
「そ、そう…。」
本当に迷惑…と言わんばかりの表情してる。
まあ、不特定多数の女の子たちにジロジロ見られるのは、あまりいい気分ではないか…。
「他の女の視線は要らない。俺、たった一人でいいから。」
「えっ?」
「その人だけに、俺のこと…見ていてもらいたい…。」
「そ、その人…?」
少し首を傾げる私に、瀬ノ内君は笑みを浮かべた。
「今、俺の目に映ってる。」
瀬ノ内君の視界と言っても広いんですが…。
私の後ろを確認しようと振り向いた瞬間、カーブに入った車両が大きく揺れる。
「わっ…」
その弾みで体のバランスを崩した私。
倒れそうになったところを瀬ノ内君が受け止めてくれた。
「…危なかったな。」
「ご、ごめん…。」
直ぐに離れようとしたけれど、背中に回された瀬ノ内君の手が、それを阻んだ。