俺は、お前がいいんだよ。
「瀬ノ内君…?」
「なんで、今…後ろを見たの?」
「えっ、あの…瀬ノ内君の目に映る範囲を確認しようと思って…」
「あー、なるほど。」
私の意図を理解した瀬ノ内君は、可笑しそうに笑った。
「じゃあ、もっと分かりやすく言うよ。」
「うん…。」
「今、俺の腕の中にいる人。」
「………え?」
それって、私…!?
「正解、分かった?」
「わ、分かるも何も…間違いようがないでしょ。だって、答えは一つだし…。」
「だよな。」
背中に回していた手をゆっくり解く瀬ノ内君。
再び、私の手を握った。
「伊織には、色んな俺を見せたいし、見て欲しい。だから……」
瀬ノ内君の目が真っ直ぐ私を捉える。
「俺だけを見ろよ。」