俺は、お前がいいんだよ。
こんなことなら、嘘でもいいから庭園に興味ないって言えば良かった…。
バカだな、私。
心の中で黙々と後悔をしているうちに、瀬ノ内君に連れられて、屋上庭園へと辿り着く。
目の前に広がる景色に、私は息を呑んだ。
レンガの小径に沿って植えられた様々な色の花。
緑の葉が鮮やかな木々。
ここがショッピングモールの屋上だとは思えないぐらいだ。
「綺麗…」
こんなに素敵な場所だったなんて…。
ポカンと眺めていると、瀬ノ内君が私の手を引いた。
「伊織、あそこのベンチで一休みするか。ちょうど木陰になってるし。」
「う、うん…。」
周りをキョロキョロと見ながら、ベンチのところまで、やって来る。
木漏れ日が眩しいベンチに二人で腰を下ろした。
さっきまでお店で買い物してたのが嘘みたい。
人が疎らな屋上は、静かで時間の流れを感じさせないぐらい穏やかな空間だ。
渋々ながらだったけど、来て良かったかも…。
吹き抜ける風に心地よさを感じながら、ペットボトルのフタを開けて、お茶を一口飲んだ。