俺は、お前がいいんだよ。

「えっと、遅刻しそうになった日…。朝、偶然…柏木君と同じ車両に乗り合わせて、それで…」


「その時、他にアイツと何か話したりした?」


「ううん、特に何も…。」


「…そっか。」


本当は、もうちょっと瀬ノ内君のことについて話したんだよね…。


“多分、陽希は…伊織ちゃんに恋してるんだよ”


不意に、あの時…柏木君が口にした言葉が頭の中で再生された。


いや、ないない。


それは、ない!


瀬ノ内君は妹さんのためを想って、私にプレゼント選びの手伝いを頼んだだけ。


私と繋がっていたいとか、そんな考えは微塵もないってば。


っていうか、どうして今…その部分だけ頭にパッと浮かんだんだろう…?


他にも柏木君が発した言葉は色々とあったのに…。


「あのさ、誠とは…あの日以降に会話した?」


「ううん。別に話すことは何もないし。」


「それから、良かった。」


曇っていた瀬ノ内君の表情に笑顔が戻る。


ホッとしたような顔だ。


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