俺は、お前がいいんだよ。
「初恋……?」
「ああ。」
小さく頷く瀬ノ内君。
心なしか頬を赤く染めながら、真剣な表情で私を見つめた。
「俺、伊織が好きだ。」
吹き抜けた潮風と共に、ドクンッと心臓が波打つ。
驚きのあまり、目を見開いてしまった。
「う、うそ……」
「この状況で嘘なんか言うはずねぇだろ。全て、本当のこと。」
瀬ノ内君はフワッと口元を緩める。
「あの雨の日、傘とハンカチを差し出してくれた優しい伊織に恋したんだ。鼓動が勢いよく高鳴った、あの瞬間は…今でも忘れない。」
「…………。」
「それ以来、気にしてなかった見た目を気にするようになった。最低限の身だしなみぐらい、ちゃんとしておかないと…って思ったんだ。もしも…この先、伊織と再会することがあったら、その時に少しでもいい印象を持ってもらいたいと思ったから。」
そっか…。
“俺を変えたのは、伊織だから”
以前、瀬ノ内君が話していたっけ…。
瀬ノ内君の見た目がガラッと変わったことに、どうして私が関係してるのか、疑問に思ってたけど……
その答えは“恋”だったんだ…。