真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜
線香花火に思い出を映して
夜8時過ぎ
インターホンが鳴ったけど
私には亜星が来るのがなんとなく分かっていた。
確証はないんだけどね。
だから、部屋着には着替えずに待っていたんだけど
玄関先から中に入ろうとしない彼に私は首を傾げた。
「何?入らないの?」
「うん。今日からちょっと用事があって、明日はお店も休むんだ。」
「どうして?」
「俺にもたまには用事があるんだよ」
そう言われて、奥さんの事が一瞬、頭に浮かんだ。
もしかしたら夫婦で旅行とか…?
「それを伝えたくて…」
「そうなの?別にそんな事、私には関係ないけど」
「それならいいんだけど、柑奈さんが一人寝の夜に泣いたりしないかなって」
悪戯に笑う彼に「呼べば来る男はたくさんいるの」と、伝えると
「やっぱり?だから柑奈さんは楽でいいな。」
無邪気に言われて
一瞬、心に鋭い刃が突き刺さった痛みを感じた。