真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜

線香花火に思い出を映して




夜8時過ぎ

インターホンが鳴ったけど

私には亜星が来るのがなんとなく分かっていた。

確証はないんだけどね。


だから、部屋着には着替えずに待っていたんだけど

玄関先から中に入ろうとしない彼に私は首を傾げた。


「何?入らないの?」

「うん。今日からちょっと用事があって、明日はお店も休むんだ。」

「どうして?」

「俺にもたまには用事があるんだよ」

そう言われて、奥さんの事が一瞬、頭に浮かんだ。

もしかしたら夫婦で旅行とか…?

「それを伝えたくて…」

「そうなの?別にそんな事、私には関係ないけど」

「それならいいんだけど、柑奈さんが一人寝の夜に泣いたりしないかなって」

悪戯に笑う彼に「呼べば来る男はたくさんいるの」と、伝えると

「やっぱり?だから柑奈さんは楽でいいな。」

無邪気に言われて

一瞬、心に鋭い刃が突き刺さった痛みを感じた。


< 44 / 104 >

この作品をシェア

pagetop