真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜
仕事が終わると、雨はすっかり止んでいて
風もない少し蒸し暑いこの時期、特有の湿気が肌をべたつかせて気持ち悪さを感じさせる。
マンション前、昨日亜星が言ってた通り、サンドイッチ屋は灯りを失ったまま、扉の前にcloseの札がぶら下がっている。
今頃、奥さんと楽しんでるのかしら。
そんな事を考えながら、階段を上がると、私の部屋の前に座り込んでる亜星の姿を見つけて、思わず駆け寄った。
「どうしたの?」
私に気づいた彼は、いつものように笑って「お土産」と、花火を見せた。
「花火…?」
「うん。…一緒にやりたくて
雨が上がって安心したんだけど、花火、嫌い?」
「特別…好きでも嫌いでもないわ。やるならやってあげてもいいけど?」
「じゃあ、やろう」
微笑んで、私の手をひく。
奥さんと出かけてたんじゃないの?
なんて思いながら、その言葉を飲み込んで
繋がれた手を、握り返した。