真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜

「俺が既婚者だって知ってるのに

何も聞いてこない。」

「…聞いて欲しかったの?」


私は花火から視線を逸らさずに聞いた。

彼は、消えた花火を手離すこともなく、きまずそうに、言葉を探してるようにも思える。


「俺って、柑奈さんにとって数あるいる男の1人…なんですよね」

「…どうかしら?」

否定も肯定もできない。

肯定してしまえば、亜星が離れていきそうで…


否定してしまえば、既婚者の彼に、変に負担をかけてしまいそうで…


曖昧な返事のあと

今度は私が聞いた。

「人には他人に触れられたくない事があると思うわ。

…私はあなたのどこまで踏み込んでいいのか分からないんだけど…?」

そう聞いた私に、彼は少し安堵したように、「柑奈さんにだから…聞いてもらいたい話がある。」

そう言った。

< 54 / 104 >

この作品をシェア

pagetop