真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜
「俺が既婚者だって知ってるのに
何も聞いてこない。」
「…聞いて欲しかったの?」
私は花火から視線を逸らさずに聞いた。
彼は、消えた花火を手離すこともなく、きまずそうに、言葉を探してるようにも思える。
「俺って、柑奈さんにとって数あるいる男の1人…なんですよね」
「…どうかしら?」
否定も肯定もできない。
肯定してしまえば、亜星が離れていきそうで…
否定してしまえば、既婚者の彼に、変に負担をかけてしまいそうで…
曖昧な返事のあと
今度は私が聞いた。
「人には他人に触れられたくない事があると思うわ。
…私はあなたのどこまで踏み込んでいいのか分からないんだけど…?」
そう聞いた私に、彼は少し安堵したように、「柑奈さんにだから…聞いてもらいたい話がある。」
そう言った。