真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜
「病気だったんです。生い先が短いのを知っていて結婚したんです。
…あの店も家内のやりたかったことで、両方の実家に援助して貰って経営したんです。」
古い記憶に霞んで見えるのは、それでも、ふんわりとした少女のような彼女で、その彼女が死に近い人間だったなんて想像もつかない。
「なんで…そんな話しを私に…?」
すると、困ったように掻きあげた彼の髪の毛が、指の間からさらさらと流れる。
「きっと…好きになってしまったんでしょうね」
「私を…?」
こくんと、確かに頷いた彼は、はにかみながら私を見つめた。
「でも、昨日あなた、私のことを楽な女だって…言ったじゃない」
「それは…
柑奈さんが悪いんです。
他の男をちらつかせるような事を言うから…」
「…年下のくせに生意気よ…」
そう言いながら
複雑な想いが胸を締め付ける。
それは、私が勝手に想いを重ねてしまったからなのだろうか