真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜

亡くなったとはいえ、奥さんは大切なんだろう…

分からなくもないけど、なんとなく…浮かない気分。

「そっか…それは大変よね。

レンタカーでも借りるの?」

「いや、電車にするよ。そのほうが楽だし。」


奥さん、電車。

この二つの言葉が私の中で繋がった瞬間


目の前にいる亜星が

最後の光太と重なる。

「柑奈…?どうした?」


心配そうに顔を覗きこんでくる姿が

亜星なのか、光太なのか

頭が錯乱して

目の前の人間が

分からなくなる。


「…ぃやっ」

目の前がぐらぐら廻って

まるで、悪夢を見てるような恐怖に襲われ、呼吸が乱れ、息苦しくなり

退いた先にあった壁に思い切りぶつかり、尻餅をついて、座り込んだ。


「柑奈⁈…柑奈どうしたの⁉」

亜星と光太がダブって見える…。

何も言えない私を強く抱きしめた彼。


そう、その彼は亜星なんだ…。


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