真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜
大の大人がしゃくりあげながら電話をしてきたんだ。
すぐに何か大きな事が起こった事は察しがついた。
「昼間…からやってるニュース…見たか?
…脱線の」
震え泣く声。
光太が家を出てからずっと眠っていた私は昼間のニュースなんか見ない。
「何かあったの?」
そう聞いたあとの会話はもう
思い出せない。
ただ
一瞬にして地獄の底へ突き落とされたような気分だった。
覚えているのは「電車」「脱線」「即死」この3つの言葉だけだった。
それを相手がどんな口調で言ったのかも
その時、私が何をしていたのかも
記憶からすっぽりと抜けてしまっている。
今も…思い出せずに…。