真夏の夜のツンデレラ〜今夜は私を愛して〜
ガックリ肩を落としている私の隣で、時折、鼻歌を歌っている。
いつまで、無人の駅にいるつもりだろう…。
ベンチに腰をかけたまま、仕方なくただぼんやりその風景を眺めていた。
視界に入る青々とした稲穂が世界を染めている、
澄み渡った青いこんな空は
今まで私の日常に存在していただろうか…?
コンビニさえない。
あるのは猛々しくも優しげにそびえ並ぶ大きな木。
空気が綺麗とは…こういうことを言うのだろうか。
現状に諦めた私は、立ち上がって大きく息を吸い込む。
青い風に混ざって夏の匂いがする。
…気がする。
私の横に並んだ亜星が、ちらりとこっちを見て頬笑む。
「なんにもないけど、綺麗でしょ?」
「そうだね…」
綺麗すぎて、私が此処にいるのが不自然なくらいだわ…。