ワンコorオオカミですか!?
全く優しくもないこの暴君と電車に向かい合わせで乗り込む。
空いているのだから、違う場所へ移動してくれないかな。
「いちいち怯えた顔してんじゃねぇぞ。別に取って食いはしねーだろうが。どっかの犬は知らんが」
「べ、別に。猫の前で顔を破綻させる人を怖いとは思ってません」
「はっ。どうだが」
横暴な人だとは思ってるけど。
でも、この人、デザイナーの仕事以外もちゃんとこなせて出来るから凄い。
「お前が下調べもせずにデザインを描いたあの猫カフェはな、保健所の猫を引き取って里親を探しつつ営業してるんだ。ちゃんと飼い主と猫の相性が合うのか、一週間の里親テストしたりな」
保健所の猫や犬を引き取るカフェが増えているのは、猫雑誌を読んでいる私も頭の隅に置いてあったけど。
「だから、俺はこの依頼を無償で引き受けてもいいぐらいのヤル気があった。てかヤル気だった」
「睨まないでください。そうやってすぐ脅すから怖がられるんですってば」
「自分がデザインした建築物の中で、猫が一列に並んでご飯を食べているの想像したらお前はときめかないのか」
「それは嬉しいですよ。でも、美国部長は安全面とか猫の気持ちじゃなくて環境ばっか優先してるんですよ。楽しそうなデザインじゃないです。無機質なロボットみたいな部屋と建物でしたよ」