ワンコorオオカミですか!?
そんなに力いっぱい否定しなくてもいいのに。
怖いなー。もう。

「そう。その時の猫は、老衰で心を通わせる前に俺の前から消えてしまった。ずっと、俺はあの猫を探してた」
どんどん話がホラーチックに進んで行くのは気のせいじゃないよね?
カラスが扱ってきそうな黒い雰囲気の美国部長は、私の顔を睨む。
「俺の顔を見ろ。――ちゃんと目を見ろ」
息もさせて貰えなうような強制的な言葉に、思わず息を飲む。

「最近、その運命の猫と再会したんだ」
「よ、良かったですね」
「だが、ある夜、俺の前から忽然と姿を消してしまったんだ。――あの夜だ。あの夜」
うわ言のように呟くと私の目を、見ながらにやりと笑う。

「真っ黒な毛皮は艶やかで、目も大きく上品な口で可愛く俺に鳴いてくる、レディだった。
まあ、驚かせてしまい胸元を引っ掻かれてしまったが、それすらも愛おしいぐらいの可愛い猫だ」


丁度電車のアナウンスが聞こえてきて、どうやらもう次が降りる駅らしい。
助かったと思わんばかりの私は、そのまま立ち上がろうとしたら、手元の切符を奪われた。

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