ワンコorオオカミですか!?
思い切り、足を踏む。

革靴だから効果はあまりないかもしれないと、踵で思い切りぐりぐりと。

「――っ痛っ」

「貴方とはもう、お仕事も出来ません! 貴方とするぐらいならデザイン手放した方がマシです!」
「んだと! てめえ」

「嫌い。最低! 来ないで! 誰か助け――」


上へ上がるのを諦めて逃走しようとした私を、美国部長は手を伸ばして肩を掴む。


それはどちらが先だったのか。


足を踏み外した私と、慌てて肩を掴もうとバランスが悪いまま私の肩を掴んだ美国部長。


どちらが先に、堕ちて行ったのか。
じんじんとする身体や頭が、現状を理解できなくて。

暫く私はぼーっとその場に座り込んでいた。
それも数秒だったと思う

「どうしたの!?」
「きゃー!」
「美国さん、地山さん!」

滲む視界から、上から木田さんと柴田さんの声が。
紺野さんが今、仕事から帰って来たのか自動ドアの方から駆けてくる。

「美国笙!? しっかりしなさい!」

紺野さんが駆けて来たのは――私の横で横たわる美国部長の方だった。
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