ワンコorオオカミですか!?
「先輩!」

騒ぎを聞いて駆けつけた狼君が私を見て駆けよってくる。

「大丈夫? 怪我は? 歩ける?」

「狼君っ」

狼君が息を切らして走って来てくれたから、緊張の音がぷつりと切れて更に涙が込み上げてくる。

「わ、――私が落ちるはずだったの。こ、此処に横たわるのは私のせいだったの」


駄目だ。

もう限界だ。
私は迷惑しかかけないし、仕事も絵以外は描けないし、安全面とか分からないし。
言葉で伝えられない上に――人をこんな風に傷つけてしまったなんて。

「も、――もう、私なんて此処に居ちゃいけないんだ」

ポロポロと泣きわめく私を、狼君が優しく立ち上がらせてくれて、端の方の椅子へ誘導してくれる。
「落ち着こう? 先輩はすぐにパニックになるんだから」

「あの人、嫌い。大嫌い。何で庇うの!?」
「それは意識が回復したら聞けばいいよ。回復するか分からないけど」

分からない……。
その言葉にまた涙が溢れてくる。

「ごめん、意地悪だった。アイツへの皮肉だったんですよ。――泣かないで」

そうしていいのか分からない涙が溢れていたら、狼君が壊れて眼鏡を私に渡してくれた。

フレームが曲がった眼鏡越しに、消防士二人に首を固定されメーンストレッチャーに乗せられて去っていく美国部長の姿が見えた。

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