ワンコorオオカミですか!?
腐っている私は、空気の良い田舎でおじいちゃんと一緒に肉体労働するべきなんだ。

会社へ行くのも怖い。
何が原因で階段を落ちたのか、根も葉もない噂が飛び交うはず。
今の私みたい。
歪んだフレームの中でしか今はもう考えが纏まらなくなっている。

「あ、辞表の書き方とかあるんだ」
検索していたら、印刷ページまで丁寧にある辞表の書き方サイトを見つけた。
印刷しながら何気なく窓を開ける。

ぼんやりと浮かぶ月は丸く。
もうほぼ満月のように見えた。
けれどどこか歪だからきっと本当の満月では無いんだと思う。

不完全な満月にさえ今は自分の様に見える。

「先輩、みーっけ」

ぼんやりと月を見ていた私に下から声をかけてきたのは、駅前の有名チョコ店の袋と、私の好きなケーキ屋の箱をブンブンと振っている狼君だった。

「今から行くから、鍵開けて下さいね」
「え!?」
「甘いもの食べたら元気出ますよ」
ブンブンと尻尾を振ってくれる狼君は、天使の様に神々しく見えるけど、今は駄目。
今は会ってはいけない。甘えてはいけないんだ。

「駄目だよ。そんなに甘やかしたら自立した大人に一生なれない。ごめんね。今日は帰ってね」

「嫌です。開けなきゃ、蹴り壊しますので」

いつになく強気な狼君が蹴るポーズをする。

それは困るけど、今は狼君の甘い言葉は私をだらしなく太らせる。
急いでドアの鍵を確認するとチェーンもする。
ついでに廊下に置いていたタオル入れも引きずってドアの前に置いた。

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