ワンコorオオカミですか!?
私は、自由に使って良いって言われて、校舎の一番奥の部屋が余りに薄汚なくて埃くさくて蜘蛛の巣と同居しなきゃいけなかったから、まずそこを好きなようにした。

ペンキをひっくり返して、ビニール地のジャージでコロコロと転がりまわり、巨大な猫の足跡の落書きをして、気に食わなかったら転がって消して。


楽しくて天井をペンキで色を塗っていた時だと思う。

ゼミの後輩が、先輩たちの就活の絵を見に来た時だ。

その時私は、レインコートに傘を差しながら、天井を青で塗っていた。
目を丸くして入り口で固まっている狼君と、真っ青になったり真っ赤になったりして怒鳴るゼミの先生が私を見ていた。


「俺、先輩に『なんで天井を青に塗るんですか?』って聞いたんですよ。そうしたら、先輩、なんて答えたと思います?」
「えー。なんだっけ?」

「『地面が黄色だから、空は青にしなきゃ』ですよ。意味分かります? もう、あの時に俺はどうしたらこの人を全て理解できるだろうかってそればっかり。俺、先輩に魅了させれちゃったんですよ。あの時から」

ゼミの先生に、元に戻せ、価値もないと大声で怒鳴られたあれを、狼君は確かにぼーっと見ていた気がする。
< 141 / 233 >

この作品をシェア

pagetop