ワンコorオオカミですか!?
「じゃあ、私は紺野さんの所へ行くから」

二日前に階段で美国部長とやり合ってしまった件で、噂が経っているんじゃないかと不安がっていた美冬だけど、なんとか頑張って俺に笑顔を作ると自分の部署へ向かう。

何処までも助けて良いなら、果てしなく傍に居て守ってあげられるけど、美冬も俺に頼りすぎないようにしているみたいだ。
だったらもう見守ってみよう。

俺は美冬を横目で見つつ自分の部署へ向かう。

俺の部署はちょっとだけ特殊で、会社側に依頼してくる企画や、色んなコンペなどに参加せず、自分たちで大筋のクライアントを持っている奴がら集まっている。

なので、自分の企画に結衣みたいに必要な部署から補助を頼む場合以外は、自分たちでどんどん仕事をこなしていき実績を積み、クライアントを増やして行く。

美国部長が29歳の若さで部長に就任しているのは、此処の人たちはどんどん自分たちで独立していっているからだ。

あの嫌な野郎の美国部長も、斜め前のディスクの相原という男も有名な写真家と契約しているので、自分の方向にあった所へ独立しようとしている噂もある。


「おはようございます。腕は如何ですか? 美国部長」

遅刻ギリギリでやってきた美国部長は、一人でどうやって着たのか分からないがちゃんとスーツを着用していた。

右肩はただ羽織っているだけの様だけど、一人で難しかっただろうに涼しげな顔をしているのが分かる。


「ふん。これぐらい問題はない。腕が一本でも使えるなら俺は仕事が出来るからな」

得意げにそう言うと、さっさと席に座ってしまった。
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