どこかにトモダチ転がってませんか?
家を出てきた時と同じ電車に乗り込みました。
揺られながら、コロコロと変わる景色や乗客を眺めている時間は、あっという間でした。

駅に着くと、外は雨降りだった。
折りたたみ傘を広げて歩き出しました。

家の近くまで来ると、さすがに少し怖くなりました。
キツネさんと同じように、お母さんが自殺してたらどうしよう…と思い始めました。

ハラハラしながら家に続く角を覗きました。
家の前には車も何もとまってませんでした。

ホッとしながら家に近づきます。
えび茶色の三角屋根を見上げて、「ただいま」と声をかけました。

門を開けて中に入り、玄関に続くレンガ道を歩いて、ドアの所までくると、思いきってノブを回しました。
鍵のかかってないノブはクルリと動いてくれた。
少しずつ開けて中に入ります。

嗅ぎ慣れた家の匂いがしました。
玄関の床の色は、いつもと同じ焦げ茶色。
靴もスリッパも、私が出てきた時と同じ状況です。
でも、一つだけ違ってたことがあります。

私の目の前に、驚いたような顔をした人が立ってました。


「………乃々果……」


太めの体型で、メガネをかけたその人を見たのは久しぶり。
一瞬、誰かと思うくらいの顔でした。


「大ちゃん……」

お兄ちゃんの大ちゃんは、私の顔を確かめるように、何度も目をパチパチさせました。
それから大きな声を出して、皆を呼びました。

「父さん!母さん!夏月!乃々果が帰ってきた!!」

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