タイムトラベラー・キス

「雫ちゃんは純粋だから傷つけるなってよく言われてた。……その時に気づけばよかったんだよね、雪ちゃんが雫ちゃんのことを好きだったって」


……野々村が、私を好きということは知っている。
婚約者だし、彼との生活がとても愛に溢れていたから。

でも、野々村が、10年前から私のことを好きだったなんて、考えもしなかった。
だって、私の知っている野々村は……顔を合わせると意地悪なことばっかり言ってきた。
いつも私を怒らせて、喧嘩ばかりしていたのに。


「結局、俺が雫ちゃんのことを傷つけて、守ってもあげなくて……雪ちゃんはそんな俺に”クズだ”って言ってさ。そっからもう口も聞いてくれなかった。そして、雪ちゃんの隣にはいつのまにか君がいて……二人はとても楽しそうに見えたよ」


「そっか……」


何も言えなくて、窓の外に目を向ける。
そして、私は今走っている道がどんどん家から遠ざかっていくことに気づいた。
なんで今まで気が付かなかったのだろう。


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