タイムトラベラー・キス
「あの、竜見くん、家から遠ざかっているような気がするんだけど……」
「気づいた?ちょっとドライブしようかと思って。もうすぐ海だよ」
まったく悪びれもせずにニコッと笑う彼に対して、ちょっとだけ”怖い”と感じる。
家に送ってくれるって言ってたのに……ドライブなんて聞いていない。
「それでね、あの時は本当に辛かったんだよね……。雪ちゃんにも雫ちゃんにも振られてさ、その二人は楽しそうで。二人に対してうらやましいって思った」
竜見くんはまた話を戻し、過去を振り返っていく。
早く家に帰りたいけれど、もう少し彼の話を聞いてみたい、とも思った。
「二人に対してうらやましいってどういう意味?」
「雫ちゃんに対しては、雪ちゃんと仲がよくて羨ましいなって思ってた。雪ちゃんはね、雫ちゃんと付き合ってからすごく幸せそうだったんだよ。それで思ったんだ……俺も君と付き合い続けたら、何か変わってたのかなって」