タイムトラベラー・キス
「たぶん、何も変わってなかったと思うよ」

野々村が私と付き合って変わったのだとしたら、それは私のことを本当に大切に想ってくれていたからだ。
今の話を聞いて、竜見くんが私を好きだったとは思えない。好きになったとも思えない。
そんな彼が私と付き合ったところで何か変わるとは思えない。


「そうかな……」


竜見くんの言うとおり、海がきれいに見える道に出た。
しばらく走り、海が見える場所に車を停めた。

周りに車を停めている人はおらず、交通量も少ない。
この空間はまさに、私たち二人だけだ。


「……今更だけど、婚約者がいるのに一人で他の男の車に乗ったらダメだよ」


竜見くんはシートベルトを外し、私のシートベルトも外した。
お互いの身体が自由となり、自然と向きあう形となる。


「えっ、それは竜見くんがひとりで帰るのは危険だって言ってたし、やましいことはないって……」


「簡単に信じちゃダメだよ」


いつの間にか、彼の手が私の髪に触れ、指で毛先をくるんと回している。
もう片方の手は私の肩に添えられていた。


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