タイムトラベラー・キス
「ちょっとお手洗いに行ってくるね」


「うん、俺も行ってくるから」


竜見くんと別れ、映画館内の女子トイレに入る。とても広いトイレだったけど、映画を見終った人たちで長蛇の列ができていた。

私はトイレに行きたかったわけではなく、カバンの中にある手帳を確認したかった。
カバンを開けると、まだ新しいピンク色の手帳があった。
4月のカレンダーを開くと、今日の日付には”竜見くんと映画デート”としか記載されていない。


未来の手帳には”キスをする 15時40分”と書かれていた。
きっと過去の私は、彼とファーストキスをした後にメモしていたのだろう。
トイレを待つ間、未来でみた記述と同じようにメモをしておいた。
映画館でキスをした後に確認もしたし、間違いないはずだ。


……用を足し、手を洗いながら鏡に映っている自分を確認する。
まっすぐな黒髪、ちょっとしかしていないメイク、そしてセーラー服。
正直言って全然ぱっとしない高校生の私。
顔も少し丸くってまだ子供っぽい。

ただ、お肌はやっぱり若いほうがキレイだな、と頬を触って確認してみる。
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