タイムトラベラー・キス

「実は俺の家って、ここから歩いて15分くらいなんだ」

「そうなんだ、この駅は栄えているし便利だね」


そんなことを話しながら彼の家へと向かう。
ここが彼の地元だったなんて知らなかった。
あれ、でも野々村くんの家はこのあたりではないけど……どちらかが引っ越したのだろうか。

手を繋いで歩道を歩いているけど、彼の歩く速度は少し速かった。
車道側を歩いて気を遣ってくれているようだけど……それだけだ。


”お前歩くの遅いからな”

呆れ顔を見せながらも、私の速度にいつも合わせてくれる野々村くんが恋しくなる。

まだタイムトラベルして数時間しかたっていないのに、もう恋しくなるなんて笑えるね。



「ここが俺の家だよ」


「すごい、立派なマンションだねぇ」


「もうずいぶん古くなっているけどね」


竜見くんの家は立派な高層マンションだった。
いつできたのか分からないけどとても新しく見える。

入口はどこかのホテルのような豪勢な佇まいで、オートロックも完備だった。


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