タイムトラベラー・キス


『ダメ、竜見くんやめて……』


――ふと、頭の中である1シーンが浮かび上がった。
暗い車内で、今と同じように竜見くんに両手を塞がれている私……。

……前にも一度、こんなことがあった?

前っていつ……?



「……ぁっ」


気が付くと、竜見くんは私の首筋に舌を這わせ、ぺろぺろと舐めたり、なぞるように舐めたり、唇を使ってキスをして惑わせる。

身体は自然と反応してしまうけれど、”怖い”という気持ちがだんだん強くなっていく。
ダメって言っているのに、構うことなく行為を進めようとする。

唇や首筋へのキスも、私への想いなんてどこにもなくて、一方的に欲を押し付けているような気がする。



こんな風に無理やり、私の初めてを奪われてはいけない。
過去を変えてしまうから、ではなくて。

こんな乱暴に抱かれたら、私が可哀想。


……そう思えるのはきっと、いつも野々村くんが優しく、愛を持って抱いてくれているからだ。


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