タイムトラベラー・キス
「本当にもうやめて!竜見くん怖いよ……!」


精一杯の力で、腕や足をバタバタと動かして抵抗した。


「つ、付き合ったのも初めてなのに、いきなりこんなのは無理だよ!」


思いっきりそう叫ぶと、竜見くんはぱっと私の腕を離し、身体を起こした。



「……ごめん。ちょっと無理やりだったかな……」


彼は私の身体を起こすこともせず、ばつが悪そうにそっぽを向いていた。
……その横顔がとても冷たくて、私はもうこの場所にいるのがしんどくなった。


「わ、私帰るね」


部屋を見渡すと、押し倒されたときに私のカバンも倒れていたようで、カバンの中身が飛び出していた。
急いで中のものを戻して、「じゃあまた明日!」と言って部屋を飛び出した。



……追いかけることも、見送ることも、送ってくれることもなく。


私は一人、彼のマンションを後にして、駅へと向かった。

< 128 / 276 >

この作品をシェア

pagetop