タイムトラベラー・キス

「お帰り、今日はいつもより遅かったねぇ。もうご飯出来るわよ」


キッチンに行くとテキパキと料理を作るお母さんの姿があった。
当たり前だけど10年前よりしわも少なく、肌もきれいで若々しい。
髪の毛も今よりもずっと多くて、なんだか胸が締め付けられるな。

年をとったとは思っていたけれど、10年前と見比べるとより実感してしまう。


「何ぼーっとしてるの?早く手洗いうがいして、着替えてきなさい」


「は、はーい」


私は急いで手洗いうがいをし、2階へと駆け上がった。


「わー、懐かしいものばっかりなぁ」


10年前の私の部屋は、今と家具の配置は変わっていないけれど、置いてあるアイテムが全然違っていた。
高校生の時にはやっていたキャラクターのぬいぐるみやたくさんの参考書、アラサーには着ることが出来ないような服たち……。

……って、いちいち懐かしがっていたらまたお母さんに怒られてしまう。

急いで適当な部屋着に着替えて、1階へと戻った。


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