タイムトラベラー・キス
「……竜見くんに連絡してみようかな」
スマホをのぞくと、特に彼からの連絡は届いていない。
あんなことがあったのに”今日はいきなりあんなことしてごめんね”という一言もないんだ。
……ちょっと幻滅してしまう。
まぁ、彼が女好きっていうことは聞いてはいたけれどね。
……って、誰から聞いたのかも覚えていないけれど。
手帳のことは確認したいけど、さすがに今日は彼と連絡を取りづらい。
明日以降連絡を取ろうと決めた私は、ベッドの上で横になり、懐かしい天井を見上げていた。
……自分で過去に戻るって決めたくせに、もう野々村くんに会いたくなった。
まぁ、この時代にも彼はいるんだけれどね。
未来の野々村くんは優しくて、私を大切にしてくれているから、17歳の私もきっと彼を好きになると思う。
私には勿体ないくらい素敵な人ってわかっているのに、どうして結婚するって思うと不安になるのだろう。
彼に内緒で、過去にまで来て……これは裏切りともいえるよね。
でも、私には竜見くんと付き合っていた頃の記憶もなければ、どうやって野々村くんと付き合いだしたかの記憶もない。
どうしてもそれが知りたくて……その記憶を取り戻したらきっと、何かが変わる気がするんだ。