タイムトラベラー・キス

お弁当を食べながらコンクリートの床を見ていると、ある影が少しずつこちらに近づいてくるのが分かった。


「お前ここで何してんの」


野々村くんは、なぜかこちらまで移動してきて、私から少し距離をとって座った。
これもまた当たり前なんだけど、高校生の野々村くん、まだ顔が幼くて可愛い。
野球部だから坊主頭で、それもまた丸っこくてかわいらしい。
学ラン姿も新鮮……。


「おい、何こっちみてにやにやしてんだよ」


「あっ、いや、なんでもない!私はたまには屋上でご飯食べようかと思って」


「へー」


野々村くんは持っていた袋から焼きそばパンと紙パックのコーヒーを取り出した。
そして、手を合わせて「いただきます」と言ってから食べ始める。


「ふふっ」


「……何笑ってんの」


「いや、ちゃんとしてるんだなって思っただけ」


高校生の時から変わらないんだなぁと思ったら自然と笑ってしまっていた。
……あまりにやにやしたり笑ったりしたら、変な奴って思われるか。
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