タイムトラベラー・キス
「変なやつ。……それにしても今日はずいぶんおとなしいんだな」
「え、なんで、普通じゃん?」
「いつもは俺の顔見ただけで睨んでくるし、何かしら文句言ってくるだろ。それなのに今日は普通に隣でご飯食べてる」
野々村くんにそう指摘されてギクっとした。
確かに、彼とは仲が悪くて文句ばっかり言い合ってたはずだ。そんな二人が、一緒に仲良くご飯を食べているなんておかしすぎる。
……10年後は、そんなことはもう当たり前になっているんだけれど。
ここの私は、野々村くんの婚約者ではない。竜見くんが彼氏で、野々村くんは嫌いな人。そういう関係ということを忘れちゃダメだ。
「……わ、私は別に一緒に食べたくなんてないけど。そっちが勝手に近づいてきたんでしょう?」
思い切って彼をにらみつけてみる。
本当はそんなことしたくないけど、ごめん。
「うるせーな。あっちは暑かったからこっちに来ただけだし。そんなに睨むんなら……」
彼は何かを言いかけたと思ったら、すっと目の前に大きい手が伸びてきた。
そしてその手はお弁当まで伸び、から揚げを一つつまむ。