タイムトラベラー・キス
それにしても、また部屋に誘うなんて……言葉の裏に欲求が見え隠れしている気がする。
とりあえず”部屋に行くのは心の準備が出来たら”と返事をしておくと、またすぐに返事が返ってきた。



”じゃあ心の準備が出来たら教えてね♪”


エッチすることしか頭にないのがバレバレだ。
どんなにかっこよくっても、こんなに獣丸だしだったら引いてしまう。

竜見くんって、本当にただ顔だけの男なのだと実感した。
どうしてこんな人のことを好きになったのだろう。
……たぶん一目ぼれだったんだと思うけど。


竜見くんとの付き合いをうまく覚えていなかった理由が分かった気がする。
紙切れのようにすぐ破れるほど、薄っぺらだったのだろう。
別に思い出を美化していたわけじゃないけど、ややショックを受けたのは事実。


……高校生の私はある意味幸せだったのかもしれないな。
自分のことを客観的に見れなかったのだから。


でも、今は自分のことを客観的に見れる”私”じゃなくて、ひたむきに”竜見くんが好きな私”を演じなければならない。高校生の私の居場所を壊してはいけないのだ。



< 147 / 276 >

この作品をシェア

pagetop