タイムトラベラー・キス
「あのね、日本史の教科書を忘れてきちゃって、持っていたら貸してほしいんだ」
「あー、日本史かあ。今日授業がなくて家にあるんだよね、ごめんね。そうだ、雪ちゃんは確か教科書を全部置いて帰っているから聞いてみたら?」
「えっ、野々村くんに?」
そうだった、竜見くんと野々村くんって親友だったんだよね。ちょっと忘れてた……。
でも、高校生の私と野々村くんは仲が悪いということになっているし、借りてもよいのだろうか。
「……俺が雪ちゃんに聞いてあげるよ、雪ちゃん、日本史の教科書持ってる?」
……どう行動しようか悩んでいるうちに、話はさくさくと進んでいってしまった。
竜見くんは席に座ったまま、近くの席で突っ伏して寝ていた野々村くんを起こす。
「ん……ある。全部ある」
身体を起こし、眠そうに目をこすりながら答えている。
こちらの様子は全く気に留めていないようだ。
「じゃあさ、雫ちゃんに貸してあげてよ」