タイムトラベラー・キス

「あのね、日本史の教科書を忘れてきちゃって、持っていたら貸してほしいんだ」


「あー、日本史かあ。今日授業がなくて家にあるんだよね、ごめんね。そうだ、雪ちゃんは確か教科書を全部置いて帰っているから聞いてみたら?」


「えっ、野々村くんに?」


そうだった、竜見くんと野々村くんって親友だったんだよね。ちょっと忘れてた……。
でも、高校生の私と野々村くんは仲が悪いということになっているし、借りてもよいのだろうか。


「……俺が雪ちゃんに聞いてあげるよ、雪ちゃん、日本史の教科書持ってる?」


……どう行動しようか悩んでいるうちに、話はさくさくと進んでいってしまった。
竜見くんは席に座ったまま、近くの席で突っ伏して寝ていた野々村くんを起こす。



「ん……ある。全部ある」


身体を起こし、眠そうに目をこすりながら答えている。
こちらの様子は全く気に留めていないようだ。


「じゃあさ、雫ちゃんに貸してあげてよ」


< 150 / 276 >

この作品をシェア

pagetop