タイムトラベラー・キス

「あー、いいよ。……って、しずく??」


私の名前を聞いて初めて、目をぱっちりと開けてこちらをみた。
まさか私がここにいるとは思わなかったようだ。


「なんだよ、都宮に貸すのかよ……」


「こらこら、ダメだよ、俺の彼女をいじめたら。困ってるんだから貸してあげてよ」


「仕方ねぇな。ロッカーにあるからとってくるわ」


……”俺の彼女をいじめたら”っていう言葉が変にくすぐったい。
あんな付き合いしかしていないくせに、こういうときだけそんな言葉を使うんだ。


うちの学校は廊下にロッカーがある。私も野々村くんの後についていく。
相変わらず背中が大きくて、がっちりとした身体付きをしている。



「……ご、ごめんね。教科書借りて」


「いいよ。この前のから揚げのお礼ってことで」


「ありがとう」


お弁当のおかずをあげた(とられた)ことをまだ覚えていたとはね。


……当初の計画とは違う結果になったけど、二人と話せてまあよかったかな。
本当は竜見くんに借りて、一緒に帰る約束までしたかったのだけど、それは返すときにしよう。




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