タイムトラベラー・キス
私から私へ。


「ゆ……き……」

再び濃厚な口づけを交わし、頭の中が沸騰しそうになる。
振り絞って出てきた言葉が、野々村の名前だった。


「よし、おりこうさん。じゃあ俺は出掛けてくるから。浅野によろしくな」


「あっ、いってらっしゃい……」


パタン、と玄関の扉が閉まると同時に私は床に座りこんだ。
嵐のような展開に心も体もついていけない。
座り込んで初めて、私はイエローの薄手のニットに細身のジーンズを着ていることに気づいた。

あれっ、なんで……セーラー服を着ていたはずなのに。
こんな服、身覚えもない。


いったいどういう事?
変な夢でも見てるの?

ついさっきまで、竜見くんとパスタを食べて、映画を見て、館内でキスをされて……。
気が付いたらどこか分からない場所で、大人になった野々村とキスをしていて……。


「って、なんで野々村とキス、なんて!あ、ありえない」


でも確かに唇には野々村の唇の感触が残っていて、思い出すだけで体中が熱くなる。
竜見くんとのキスを思い出したいのに……思い出せないくらいに、野々村とのキスが強烈だった。
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